松原ぼたん
オープニング
「姉さん、好きな人いないか?」
ジラスの言葉にフィリアはまともにお茶を吹き出した。
「な、何を言うんです!?」
「親分なんてどうだ?」
「何を言ってるんです、ヴァルはまだ子供・・・・」
いいつつ、ふと以前のヴァルの姿を思い出した。
あの時はごたごたしていたのでそこまで思考は回らなかったが・・・・・。
確かに外見は間違いなくフィリアの好みのタイプだった。
しかし、あの性格は恋人にするにはあまりあわない気がする。
・・・・性格?
「そうよね」
「あ、姉さん?」
フィリアの異様な雰囲気にジラスはおびえた。
竜族である以上、これぐらいの年の差は問題ない。
様は好みの性格に育てればいいだけの話である。
「やるわっ」
フィリアは燃えていた。
その1
「とにかく性格をよくしなければいけないわ」
フィリアはがんばった。
きちんとしつけはし、さりとて厳しくなく。
お前は巫女をやめたんだろうなどという作者のつっこみを無視してヴァルを毎週神殿に通わせ。
結果・・・・。
「フィリアさん、僕と・・・・」
絵に描いたようないい人のヴァルに成長した。
「こんなの親分じゃない」
「・・・・ど、同感です」
その2
「こ、今度は放っておきましょう。その方が上手く行くかもしれないわ」
「姉さん、どうやって時間戻した?」
「細かいことを気にしてはこの話は成り立ちません」
最低限の世話の時以外、フィリアはヴァルを放っておいた。
結果・・・・。
「母さんは僕が嫌いなんだ・・・・」
暗い少年ができあがった。
「親分、キャラが違う」
「・・・・そ、そうですね」
その3
「中途半端がいけなかったんだわ。この際徹底的に厳しく行きましょう」
フィリアはヴァルを徹底的に管理した。
しつけは厳しく、ヴァルの自由はないに等しい。
結果・・・・。
「けっ、こんな家おんででやる。老後の世話なんかしてやらねぇからな」
ぐれた。
「親分、前よりすさんでる」
「私がいけなかったわー、帰ってきてーっ」
その4
「き、厳しすぎるののもいけなかったみたいね」
最低限のしつけと世話。
悩みがあれは聞いてやる。しかし決断は自分でさせた。
結果・・・・。
「母さん、今までお世話になりました」
自立した。
「親分、立派になった」
「・・・・確かに子供の教育としては間違ってないかもしれませんけど・・・・」
その5
「フィリアさん、何なら僕がヴァルガーヴさんを教育しましょうか?」
「絶対にやめて下さい!!」
「まあまあ、そう言わずに・・・・」
結果・・・・。
「それは秘密だな」
秘密主義になった。
「この程度で済んでよかったわ・・・・」
「姉さん、それ、なんか違う」
エンディンク
「姉さん、無理しない方がいい」
「そ、そうね。よく考えたらあの性格のヴァルもそう悪いってわけじゃなさそうだし。それに今の小さなヴァルもいとおしくてたまらないのよ」
だったら最初からするなよ。
「おい・・・・・」
「え?」
「お、親分!?」
「何時の間に成長したの?」
あんたらが遊んでいる間に決まってるだろーが。