花愛でる魔王

松原ぼたん 


 「やれやれ、随分とおいたが過ぎるようだね」

「何の話ですの? 赤眼の魔王様」

「決まっているだろう? リナ=インバースの話だ」

「随分とご執心ですこと」

「そう言うな。きっと人間だったときの感情がまだ影響を与えているんだろう」

「それで? 今度は何がありましたの?」

「また我が欠片が彼女の手によって滅ぼされたようだ」

「あら、それをおいたですませますの?」

「退屈しているのだよ。白一面の世界にいると刺激がほしくてな。少しぐらいの被害なら許したくなるほどな」

「あらあら。それでは滅んだものも浮かばれませんわね」

「そちらこそ随分人間臭いことを言うね?」

「私の部下に一人人間じみたのがいますから。ところで彼女がどうかなさいましたの?」

「魔族の雑魚が少しばかり死のうともかまわないんだがね。そのせいで彼女が怪我でもするのではないかとね」

「そんなことをおっしゃると魔族の誰もが彼女に手を出さなくなりましてよ?」

「向こうが手を出さないとは限らないからね」

「全くですわ。――でしたらいっそ捕らえてしまうのはいかがでしょう?」

「捕らえる?」

「彼女が大人しくなればそんな心配は少なくなりますわ。その方法の一つとして」

「野の花は野にいてこそ美しい気もするが……やむをえないな」

「そうですわ。それがひいては魔族の為にもなりますし」

「方法は?」

「お任せ下さい。必ず彼女を捕まえて見せます」

「鳥を銀の檻に入れるように、か」

 


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