露蕗
「で・・・ぬわぁ〜んでこーゆー結果になるのよぉぉぉぉぉ〜!!!」
超絶可憐美少女魔導士(自称)リナ=インバースの絶叫は虚空に空しく放たれた。
そう、何と言うか空しい以外のナニモノでもない。
何とかダークスターも倒して。
どさくさに紛れて神族のクズって感じ〜?なエルロゴスやら最長老やらも亡き者になったし。
忘れていたグラボスも(方法は知らないけど)戻ってきたし。
ヘンタイと紙一重な悲劇のヒロイン(嘘)ヴァルガーヴも卵になったし。
どさくさ紛れでヴァルとフィリアの和解も成功と言えるかも知れないし。
そう、リナたち正義の仲良し4人組+αにとっては、これで大団円だと思っていた
なのに。
リナが震える手で指差す先には・・・ひとりのにーちゃんがいた。角はないけど、その流し目は間違いなくヴァルガーヴ。
「どーしてアンタが此処にいるのよーーーーッ!!!
そ・・・それより・・・・・その服装は一体ナニ!!?」
ヴァルガーヴの服装は、暴走族崩れでもなければ半裸でも、全裸でもなかった。
彼は・・・セーラー服を着用していたのだ。
しかもヘソ出し、ミニスカ、とどめにルーズソックス。
「いやあああああああああああああああああ!!!!!!!」
女性陣は悲鳴をあげるだけの余力はあったが、ゼルガディスとガウリイは完全に生命活動を停止した。しかし、ゴキブリ神官ゼロスだけはいつも通りニコタンマークもびっくりな糸目で微笑んでいる。その後頭部に・・・フィリアのモーニングスターがストライク!
笑ったまま吹っ飛ぶゼロスを見て、流石のヴァルガーヴもずずい〜っと後ずさる。
「なななななな〜んであなただけは平然としてるんですかッゼロス〜〜!!!
これだから魔族ってのは!!」
「やだな〜フィリアさん、魔族を見たら変態と思えだなんて、それは偏見ですよ★
これだから巫女さんっていうのは世間知らずのお嬢さ〜ん♪」
「誰もそこまで言ってません!!ってゆーか、『お嬢さん』ネタはもう結構ですー!!」
地面とディープキスをかましながらもヴァルガーヴとフィリアのトラウマを巧みに攻撃するゼロス、赤面したフィリアにコブラツイストをかけられてもまだ笑っている。「ゴキブリ」さえ言われなきゃ平気なのかアンタ。
「夏目漱石の『こころ』が読めなくなったり、『森の熊さん』が歌えなくなったりな・・・」
冷静さを装うゼルだが、やはり発言が変。どっちにも「お嬢さん」という単語が地獄のように出まくっている事はヴァルファンなら押さえておこう。ちなみに露蕗は、現代文のテスト範囲が『こころ』のお嬢さん部分オンリーだったせいで「テスト勉強できないよぅ」と悶絶していたが、その話は別の機会に。
「アレもある意味ヘビー級の精神攻撃です!!ヴァルガーヴさん!!
でも、今のその服装も以下略〜!!!」
メンバーの中で最もロマンチストだと思われるアメリアにとっても、14話の「お嬢さん」発言は毒だったらしい。個人的には14話より、25話の誰も望んじゃいない「お嬢さん、か・・・」の方が大ダメージだったけど。
「キムタクの奥さんっておニャンコ出身なんだよな〜」
「セーラー服を〜脱がさないで〜♪・・・って、目の前にセーラーを着たヤローが腰に手を当てて立ってるんですよっガウリイさん!!変な冗談は止めて下さい・・・。
で、でもっ!!脱がした方が世界の平和の為かも知れない・・・どーします?ゼルガディスさん・・・」
「止めておけ・・・もしセーラー服の下も女物だったら・・・・・。この世界は・・・終わる。」
一見真剣な顔を寄せ合って討論しているようだが、真っ先に脳死したのは此処の3人らしい。
「・・・本題に戻らせてもらうけどさー・・・・。
ヴァルガーヴ、な・ん・で・あ・ん・た・が・コ・コ・にい・る・の!!?」
どうしてこの美少女天才魔導士リナちゃんがセーラー服のヤローと対面しなきゃいけないのよ〜!!と心で泣きながらもヴァルガーヴにどアップでせまるリナ。がんばれ主人公。
「それは・・・秘密っていうか俺も知らない。」
逆に流し目でせまって来るヴァルガーヴ。
「・・・あぁ?」
「卵から出てきたら、最初っからこのサイズだったんだよ。
残念な事にツノを失ってしまったが・・・・」
額を押さえて自嘲するヴァルガーヴ。恐ろしい事に目を伏せるとめちゃくちゃ色っぽい。
「べ・・・べつにツノなんてなくてもイイじゃない・・・はっきり言ってそっちの方が美形だし〜」
今のこの状況では美形も何もあったモンじゃないと思いつつ、突っ込むリナ。
「リナさん、ヴァルガーヴさんはツノがなければただのヘンタイさんでしかないんですよv」
『うひぃぃぃぃっ!!!』
フィリアの攻撃を逃れ、やっとリナとヴァルガーヴのところに辿り付いたゼロスだったが、彼をひと目見た瞬間、2人とも悲鳴をハモらせてずざざざ〜っと引いた。だって、最初のモーニングスターの一撃で頭の形が変化してる。いわゆる頭蓋骨陥没。
「ぜ・・・ゼロス・・・病院行った方がいいわよその頭」
「嫌ですね〜。僕はこう見えても、降魔戦争の時には数え切れないのも馬鹿らしいくらいのドラゴンたちを・・・ってこの台詞は終わったんでした。
そんな事より、ヴァルガーヴさんにツノが無ければならない理由・・・リナさん分かりません?」
人として間違った頭部のゼロスに抱きつかれ、青ざめるリナ。この状況で考えられる訳も無い。
「もったいぶるのはアンタの十八番よね・・・いーからさっさと言いなさいよ!!」
「・・・何を、でしたっけ?」
「やっぱりさっさと病院逝け(文字違い)アンタは〜!!それとも何!!?老人性アルツハイマーですかいこの素ボケ神官〜!!!!」
抱きついているゼロスを引き剥がそうと、リナがやみくもに手をぶんぶん振り回すと裏拳の要領でゼロスの顔面にこぶしがヒットし・・・頭の形は一瞬で戻る。
「うぷっ・・・」
一部始終を見てしまったヴァルガーヴ、思わず口元を押さえてその場にしゃがみこんでしまった。
「おやおやヴァルガーヴさん、意外と繊細なんですね。まあ繊細じゃなければ世の中の不条理に絶望して世界の破滅なんて望みませんよね〜アハハハハハ。
とまあ冗談はこの位にして・・・。
ヴァルガーヴさんのツノはズバリ、魔竜王ガーヴさんからのプレゼントにして魔力の源だったんです!!
だから、魔力の供給源を失った今、ヴァルガーヴさんはただのヘンタイでしかありませんね。まさか持ち前の不幸フォースとエロ腰と流し目とアメリカンクラッカーと竜族の力だけで僕ら全員を倒す事なんてできっこないですから。ねっ★」
「ふん・・・相変わらず口も八丁だな、ゼロス・・・。
確かに今の俺には、お前たちを倒すだけの力は持ち合わせては居ない」
何故か余裕の笑みを浮かべ、ゼロスを睨みつけるセーラー服着用のヴァルガーヴ。
「だが・・・俺はガーヴの名を継ぐ者!!
このままガーヴ様の仇を取らずに終わってたまるものか!!!」
「何言ってんのよ・・・勝算無いくせに」
「そーです!!ヴァルガーヴさん、あなたは生まれ変わったんですよ!!もうガーヴさんに捕らわれている必要はありません!!さあ、一緒に正義の賛歌を!!」
「アメリア・・・奴に歌だけは歌わせるな・・・・・」
「ヴァルガーヴ、ツノなくなって良かったな〜。これでお前もギャグ月間には女装で決まりだな!!」
なんとなく見慣れてきたらしい脳死組も必死で呼びかけるが、ヴァルガーヴの表情は依然怒りに燃えたままである。
「俺は確かにすべてをやり直すために転生し、ガーヴ様の力を失った。
しかしただひとつ、このセーラー服だけは今の俺に受け継がれていたのだ!!!
26話アイキャッチのあの気高く誇り高い御姿・・・俺は、最後に残されたこのセーラー服で戦い抜くと決めたのだ!!
リナ=インバース、そしてゼロス・・・貴様らだけは絶対に許さねえ!!
この壮絶な美しさで、貴様らは絶対に倒す!!!」
ひゅるり。
風は・・・寒い。寒すぎる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
春一番は北極のブリザードになって「パトラッシュ・・・僕はもう疲れたよ・・・」「へへ・・燃え尽きたぜおっつぁんよお・・・」っって位に氷点下。ペンギンがいるのは北極?南極?
皆様は覚えているだろうか。TRY26話アイキャッチを。セーラー服着用・ルーズソックスにたくましいスネ毛で決め★なぢょしこーせいガーヴとお付きの応援団ヴァルガーヴを。全国に脳死者を出しまくり、各地で議論を呼んだあのセーラー服は、なんとヴァルガーヴに受け継がれていたのだ。ちなみに「誇り高い御姿」と見たのはヴァルガーヴだけだと思われる。
「はっ・・・昔飼ってた犬がお迎えに来てたわ・・・危ない危ない。
ってヴァルガーヴ!!どーして乙女のリナちゃんがアンタと美しさを競わなきゃいけないのよ!!もちろんあたしの方が・・・綺麗系ではないけどっっホンモノの方がいいに決まってんでしょ〜!!!このオカマ〜!!!ニューハーフのドラッグクイーン!!」
「リナ・・・ドラッグクイーンが貧相なセーラー服姿で登場するか・・・?」
博識ゼルがすかさずツッコミをいれる。そういう知識は心の奥底にしまっておくべきだと思うけど。
「ゼロス!!アンタも何か言ってやりな・・・・!!!?」
不毛な女装(?)対決に巻き込まれた最後のひとり、ゼロスに話を振ろうとしたリナは・・・今度こそ再起不能のダメージを受けた。
ゼロスはすでに真紅のチャイナドレスを着用していた。しかも、NEXTのギャグ月間とは気合が違う。糸目を半開き、ヴァルガーヴに負けず劣らずの流し目になっている。もちろんアイシャドーとルージュも忘れない。
「ヴァルガーヴさん、忘れたんですか?僕はあなたとは違って純魔族の精神体・・・♂でも♀でも選び放題なんですよ・・・あなたのような半端なオカマとは格が違うんですよ、ギャルガーヴさんv」
「チッ・・・」
ヴァルガーヴの形勢が一気に不利になった。眉間に皺をよせた女子高生・・・こ、怖ひ。
「さあどうします?その格好で泣いて帰るか、それとも自爆覚悟で戦うか・・・まあ、後者の場合結果はもう見えてますけどね。転生したヴァルガーヴさんなら、どちらを取りますか?」
羽根つき扇子の陰から目だけを出してヴァルガーヴを見つめるゼロス。
「・・・此処まで来て、黙って帰れるか・・・」
「待ってください!!!」
異様なオーラが漂う2人の間に割って入ったのは、やはりフィリアだった。
「ヴァルガーヴ・・・もう、もう止めて下さい!!
あなたの『すべてをやり直したい』という願いはもう叶ったんですよ!!なのに・・・なのに、また同じ悲劇を繰り返そうと言うの・・・?どっちかというと喜劇だけど。」
巫女を廃業したフィリアさん、辛口になってる。
「お嬢さんか・・・。
確かに古代竜として、ヴァルとしての俺の願いは叶ったさ。もう一度、命ある者として生きてゆきたいと・・・。もうあんたの事は恨んじゃいない。
だが、俺が背負っているのは古代竜族の、一族の気持ちだけじゃないんだ!!ガーヴ様の仇はまだ討ってねえ・・・。
俺は、ガーヴ様の無念をはらさなければならないのだ!!このセーラー服のある限り!!」
ヴァルガーヴがシリアスになればなるほど、凍り付いてゆくレギュラー陣。マイナスって限界温度があるはずなのに、どこまでも冷えていく。
「じょ・・・冗談じゃないわよ!!なんでセーラー服一枚のせいで倒されなきゃいけないのよー!!そんなの、世間が許す訳がないでしょーがっ!!!」
自分の命がセーラー服に懸けられている。リナじゃなくてもショックだって。
「・・・分かりました・・・・・。
ヴァルガーヴ、あなたがそこまでそのセーラーにこだわると言うのなら・・・それは私が受け継ぎます!!」
『何でそーゆー結論になるッ!!!?』
全員の声が見事にハモったB
「だって・・・私だってギャグ月間にコスプレしたかったんです!!
それに、セーラーといえば乙女の憧れアイテムなんですもの!!!」
「お、お嬢さん・・・・・」
「あ・・・」
突然セーラー服着用のヴァルガーヴに抱き締められ、赤くなっていいのか青くなるべきか悩むフィリア。そして耳にヴァルガーヴの唇が近づき・・・。
「年齢オーバーだな。」
「え?」
「セーラー服は18歳が限度だろう?お嬢さんが歌舞伎町の女王を目指すのなら別だが・・・」
「だ、だってあなた今着用して・・・・それで『お嬢さん』って」
「・・・悪い・・・・・。
俺は、あんたの名前が覚えられなかったんだ。ファーストネームにミドルネーム、ラストネームまであるあんたの責任だが・・・」
「え・・・ええ!!?」
「それに・・・・・実は俺、近眼なんだ。
だから目つき悪ぃし、16歳なのに老けて見られるし・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ぷち★
「だったら魔竜王ガーヴのセーラー服姿は何だって言うんですかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あのお方は特別だ!!
あのたくましい胸板に、堂々とスネ毛を這わせたルーズソックス・・・お嬢さんにはあの男の魅力はわからねーさ!!」
「分かりたくないってゆーか、あなたにしか分かりませんよンなモン〜〜〜!!!」
これってヴァルフィリ?(死)
「もーヴァルガーヴさんてばー・・・僕の方が美しいって認めてくださいよ〜」
「ゼロス・・・放っときなさい。」
世界を救った意味が一応あった事に安堵するリナではあったが・・・
ふと思う。あの戦いは一体何だったんだ。
そしてセーラー服は誰の手に・・・・続く(嘘)。
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「樹海」から小説書いてなかったんです;
すっかり書き方忘れちゃったし、面白いかどうか自信ないです;
ヴァルフィリでもないし、全てのキャラのファンに土下座!!(><;)
一気に書いたんですけど・・・ス〜ミ〜マ〜セ〜ン〜。