恋人たちのクリスマス
一姫 都
星が降り
幸福を与える
――すべての
愛おしきものたちに………
「うーーーーーんと、あとは何だっけ………?」眩く、美しい装飾の数々。
ライトの明かりも、人々の表情も、そのすべてが輝いて見えるのは、今日がクリスマスだからなのだろう。
街路路のあちこちに、華やかに彩られたモミの木が立ち並んでいる。
ケーキの甘く、柔らかな匂いが、その雰囲気をより楽しげなものにしていた。
そんな情景の中、寒空の下メモと向き合い、険しい表情を見せているのは、この村の唯一の骨董や主人フィリアだ
った。
「ケーキは…、買ったしぃ………。
プレゼントも買ったわよねぇ………?」
呟き、手の中の袋を覗き込む。
先ほど店で購入したその品物は、ヴァルへのクリスマスプレゼントだった。
「……気に入ってくれると良いけどっ」
足取り軽く…、後ろに流れては耳に付くその、クリスマスソングの歌詞のように
フィリアは楽しげに家へと急いだ。
「……うーーーーーん…・・」
手のひらに乗った少しばかり…それでも、彼が三ヶ月働きづめで手に入れたお金を
見やり、ため息をつくヴァルガーヴ。
これで何を買ったらよいものか、彼には解らなかった。
フィリアの好きなモノ……って………?
長く暮らしているのだから、少しぐらいは解る。
彼女は……、紅茶が好きだ。
入れる事、飲むこと………、けれどせっかく「聖なる日」とまで題される日なのだから
もう少しそれらしい贈り物がしたい………。
そういう意味では骨董品も除外されてしまう。
「…………どうするかなぁ……」
腕を組み、とりあえず店を見回る。
どこもかしこも、暖かく、艶やかな雰囲気が立ちこめ、異様なまでのお祭り騒ぎだった。
花……とかもいいかな…。
それとも…洋服……?
よりフィリアに喜んで貰いたいがために、それなりの品物を探し行くヴァル。
しかし、良いと思った物でも、「これ以上があるかも……」と、考えてしまいなかなか決まらない。
思い切りのよさが自分の良い所だと言われていたのに………。
そうして、街をほぼ一周した所で勢い良く座り込む。
「だぁぁぁぁぁっっっ、もうっっっ!!!」
路地の石は堅く、冷たい。
「……ほんとに……
どうするかなあ……………」
そんな少年の姿を…、影から見守る一人の男……。
「おいっ」
ふいに前へ影が出来、強く声を掛けられる。
上を向けば、やけに背の高い覆面の男がこちらを見下ろしている…。
はっきりいって……
――怖いっ!!
なんだか、妙な威圧感と不気味さを感じ、たじろぎながら返答するヴァル。
「…なっ、なんだよっ」
「お前、何を買うか迷っているだろう。
それも…、彼女へのプレゼントだな……?」
まるで心の内を透見されているかのような男の言葉に、驚きつつも頷くヴァル。
「…なっ、なんでわかんだ!??」
「ふっ、簡単だ」
胸を張り、自慢げに言い切る覆面男。
「俺はサンタだからなっ!!」
体の芯まで…
冷え切ったように感じたのは…、気のせいではないだろう。
「…あ……
兄ちゃん…、ヤバイ人かー……」
関わり合いになりたくない人種だと判断したのか、さりげなく足を進め行くヴァル。
「ちょっとまてっっ!!
本当だっつーーーのっっ!!!
証拠に、お前にプレゼントをやりに来たんだよっっ!!!」
強引にヴァルの肩を掴み、元の場所へと引き戻す。
そして、手に携えていた大きな白い袋から、何やら小さな箱のようなものを取り出す。
「…なんだ、そりゃ…?」
「ほれっ、見て見ろ」
それを渡され、とりあえず中を確認するヴァル。
「………おーーーーーっ」
「ちょっと凄いだろう?」
不思議な光沢だと…、ヴァルは思った。
繊細な技法で創り出された、美しい髪飾り…。
あちこちに宝石のようなものが鏤められおり…、それがまた優雅さを生み出している。
「…これ…くれんのかっ!?」
「ああ。
けど、タダって訳にはいかねーなっ」
「いくらだ?」
「嫌…金はいらねぇ……。
そうだなあ………………」
腕を組み、しばし考えてから男は静かに呟く。
「お前が付けてる、その時計…だな」
言われて、一瞬黙り込むヴァルガーヴ。
この時計は大切なものだ…。
フィリアが言うには、俺の父親のような存在だった者の遺品らしい。
何処から、どうやって、それが俺の手に渡ったのかは定ではない…。
ただ…、10歳になったその日……。
玄関にひっそりと置いてあったそうなのである…。
たくさんの花束と…そして小さなバースデェイカードと共に…。
フィリアは、巫女だ。
そこに残る…、持ち主の気配から、その人物を俺の父親のような人物だと感じ取った…。
「………解った…」
鎖をとき、時計を外す。
「………どうした?」
「へ?」
「酷い顔だぞ?」
言われて、側にある店のウィンドウを覗く。
「……本当だ……」
「大切な物じゃないのか?」
「………ああ……
………けど……」
間を区切り…、ゆっくりと息を吐くように呟く。
「……いいんだ…」
こんな物が無くても……、その事実だけで十分だから………・。
その人が…俺に、プレゼントを贈ってくれたという事実……。
それがあれば……、幸せだから………。
「じゃあ…、ありがとうなっ
自称サンタの兄ちゃんっ!」
そう言って、勢い良く駆け出すヴァルガーヴ。
「……安心しろ。
20歳の誕生日には…、また何かやるよ…………」
「えっ……?」
振り向けば、そこに男の姿は無かった…。
「ただいまー」
「おかえりなさいっっ」
すっかり暗くなった空を見上げつつ、ヴァルは家路につく。
満面の笑顔でそれを迎えやるフィリア。
家中に暖かく、美味しそうな匂いが立ちこめ…、優しい雰囲気が漂っている。
煌びやかに彩られた部屋が、それを確かなものにしている。
「……あっっ!!!」
さき程から感じていた違和感に、答えを見つけ声を上げるヴァル。
「……フィリア……髪……」
「ああっ、これ?」
すっかり短くなり、やけに軽そうな頭を手で押さえつつ、恥ずかしげに呟く。
「切ったのっ
どう、似合う?」
その言葉に、どう返答していいものか悩み、呟く。
「……あ…う、うん…」
「はいっっ、これっっっ」
「…え?」
そうして、フィリアから手渡された袋。
「プレゼントっっ」
開け、出すと同時に何かの金属音がする。
――かしゃんっ
「これ………」
「欲しがってたでしょう?
時計の鎖っっっ」
確かに……、ずっとそう言っていた…。
秋頃店で見つけ、それでも手に入れられなかったのは、目が飛び出るようなその値段…。
高すぎて、気まぐれに…で買えるようなシロモノでは無い。
――ああ……そっか…。
フィリアは、髪を売ったんだ……。
あれ程の金髪ともなると、結構な値になる。
「………ははっっっ」
ふいに笑いがこみ上げ、胸を押さえるヴァル。
「何――っっ
どうしたのよぅっっ」
「……あはははははははっっっ
……何でもないよっ……」
――まるで、お伽話のような一日……。
星が降り
光りが落ちる
聖者が舞い降り
幸福を与える
恋人達は、互いを思い…。
夢のような時を過ごす……。
―― Merry X`mas ――
* e n d *
はいーーー、なんだか色々でしたけど、結局お互い、自分の大切なものを売ってプレゼントを買った訳なのです。
んで、髪を切ったフィリアの髪飾り、時計を渡したヴァルに鎖…と。
あと、サンタはもちろんあのお方ですっ(はぁと)
下の続きがあるので読んでやってくださいなっっ
そりでわーーーーっっっっ
「まったく…親馬鹿だねぇ……」
ふわふわの白のコートに身を包み、寒そうに手を結びながら呟く子供。
「滅んでまで、見に来るなんてさあ…」
「まあ、いいじやねーかっ
今日はクリスマスだしなっ」
「ふーーーーんっっ」
「ほらっ」
小さな袋を渡される。
「…なにさ?」
「プレゼントだよ」
「……………開けていい?」
リボンをとき、袋を開く。
「お前、いつも寒そうだからな」
呟き、照れくさそうに後ろを向く男。
中身は、コートと同じようなまっさらな手袋…。
「………ガーヴ……」
「ん?」
「メリークリスマス…」
「ああ……」
作者から一言っ*
へろへろでしゅーーーーーーーーーっっっっ(はぁと)一姫都でしゅーーーーーーっっっ
何を思ったのか、ヴァルフィリでクリスマスですっっっ(笑)
なんとっっっっ、ジラスとクラボス出てきませんっっ!!
(何故…???)自分でも不思議なぐらいなのでしゅが…何故か忘れていま………
ぐはっっっ(吐血)
な…なんでもない…ですっっっ、ええっっ(大汗)
ちなみに題名はあの有名な曲からいただきましたっっっ(はぁと)
バックに流しながら読んだりすると、面白いかもしれませんっっ