TABLE

ももじ


 

 【前説】―ヴァル・ガーヴ・フィリアの場合

 

「オマエから、死にな。」

 

切れ長の瞳からは哀しい光。背後には、闇の世界へと待ち受けているゼロスの姿。

手に握られているのはガルヴェイラ。

向けられた矛先には、潤んだ瞳のフィリア。

 

「ヴァルガーヴ!どうして!!生まれ変わったあなたをどれだけ大切に思って…」

 

ふっ、と一笑して構える。

 

「所詮、オマエとオレは相容れないんだよ。オレだけは裏切らないと思ってた?

 そういうオマエのめでたいところ、可愛いかったぜ。…本当にな、お嬢さん」

 

ヴァルガーヴの手から矛先へ、徐々に力が集中しているのが目に見えてわかる。

涙目でフィリアが何か言った。小さい声で聞き取れない。

首を傾げてヴァルが近づく。

 

「…オイ?どうした?」

「…………したくせに」

「は?」

「キスしたくせに!舌入れたくせにッサイテーーーーーーッ!!!!!!!!」

「がびーーーーーーん!!!!!待て!誤解だオレは無実だーーーーーッ!!!!!!!」

「ちょっとちょっとちょっと!!!何痴話ゲンカしてるんですーーー!!!」

 

メガホンでめいいっぱい叫ぶゼロスの声がこだました。

 

「二人とも台詞変えないで下さいよ〜も〜!勝手に!!ヴァルガーヴさん、

今時”がびーん”なんていうのはガーヴのオヤジくらいですよ。」

 

ガルヴェイラでぽんぽん肩をたたきながら、やる気のない顔でヴァルガーヴが答

えた。

 

「ガーヴ様の悪口いうな。オマエから殺すぞ。」

「そんな台詞もありません。まじめにやって下さい?欲しいんでしょレギュラー。」

「だってよー…マジで泣くんだもん、コイツ」

 

まだ泣いているフィリアをやりきれない表情で見るヴァルガーヴ。

 

「だってだってだって!!あれは本気の目です!演技とは思えないです!

普段からそうおもってなきゃできませんっ!!」

 

わーっっとその場で泣き崩れた。ため息をつく二人。女のヒステリーは怖い。

ヴァルガーヴは頭を掻きながら、その場にうずくまるフィリアの顔をのぞき込んだ。

 

「悪かったな…オレの演技が上手いばっかりに…いやオレは悪くないな…

 全てゼロスのせいだ…」

「ちょっとヴァルガーヴさん。なぜ今の話がそんな風にまとまるんです。」

「わかったわかった、家に帰ったらネイルアートしてやるから。な?」

「本当に?ミッキーマウスじゃなきゃダメですよ?」

「ちょっとお二人さん。人の話聞いてますか?」

「ネズミでいいんだろ、わかったオッケー。」

「ちょっとヴァルガーヴさん。身も蓋もない形容でTDLを語らないで下さい、

いいですか、ミッキーは…」

「っるーせーな、オマエ魔族だろ。大体この脚本が悪いんだよ!

なんでオレこんなにカワイソーな役なわけ?オレってなに?ピエロット?ああ?お?!」

「切れてます…ヴァル…こうなっちゃったら手つけられませんわ、ゼロス。」

「わかりました、脚本を変えましょう。そしたらオッケーですね?」

「ああ、なんだってやってやるさ、それ以外なら。」

 

* 快楽園(仮)−失楽園の大ヒットを受けて、ガーヴ・ヴァルガーヴ・フィリアが魅せる

三人の激しい絡み合い!流れるヤローの熱い汗、荒い息づかい!

マスコットキャラとしてグラ・ジラチュウを採用。

 

「……………………。」

「どうしました、フィリアさん?顔色が赤いのか青いのかはっきりして下さい?」

「ふ……ふ……!!!!!夕方からこんなもん放映できるか!!!!バカ神官ッ!!!!!」

「ガーヴ様は快く引き受けてくれましたけど?さっき何でもやるって言ったくせにィ。」

「が、ガーヴ様が…?!」

「ななな何ヴァル、本気で考え込んで…あの…ヴァル!黙らないで下さいっ!」

 

がっ!と不意に腕を鷲掴みにするヴァル。

真っ正面から見据えられるとフィリアは赤面したまま黙ってしまう。

 

「………お嬢さん、協力しな。

オレは保健体育の先生、オマエは悩ましげなセクシー中学生。いいな?なりきれ!」

「せ、セクシー…ちちちちょっと!どこでそんなこと覚えてきたのよ!」

「それは秘密です…それがオマエにできる唯一の罪滅ぼしさ!」

「ぜーろーすーーーーーッ!!!!!うちの息子に何したのよーーーーーーー!!!!!!!」

 

フィリアの背中から、竜の羽がぐわっとはためいたかと思うと、華麗な竜の姿に変身した。

二人に襲いかかるフィリア。間一髪で攻撃をかわし、猛ダッシュで走りはじめるゼロスと

ヴァルガーヴ。フィリアの目はすわっていた。

 

「何でオレも逃げなきゃいけねーんだよ、話が違うぞゼロス!」

「お仕置きでしょう、多分。いくら何でも悪のりしすぎでしたね、アーメン。」

「アイツにイメクラもどきなんて土台無理な企画だ!元巫女だぞ!」

「お、略語も覚えましたか。大きくなって…僕はなんだか嬉しいです…涙が………」

「お、オマエ………覚えてろよ!マルコメにしてやる!ホントの坊主だ!バカタレッ!!」

「ハイハイ、この場を切り抜けられたらお相手しますよ」

 

どどどどどどどどっ!!!!

疾風のように走り抜ける二人。かれこれ20kmマラソンをしている。

が、フィリアの攻撃は止まらない。

 

−ちゅど〜〜〜んっ!!!!!

 

「チ、辺り構わず攻撃してるぞ、切れるとオレよりアイツの方がある意味怖いんだ!」

「『タイタニック』って2作るべきじゃないと思うんですけど、どう思います?」

「賛成。って話を逸らすなッ!大体この企画自体間違っていたのさ!

 覚えてろよ、あのスコップ女!!!!」

 

全力疾走する二人。

そもそもこの事態のきっかけはささやかなパーティーであった。

ロード・オブ・ナイトメア、略称L様主催のささやかな。

 

〜つづく〜