『もう一つのゼラスに捧げる子守り歌』

ふぉお

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「ゼロス。今暇だな?」

いきなりゼロスの部屋のドアを開け放ったゼラスは、開口一番そう言い放った。

「みてのとおり、ものすごく忙しいです!!!!」

机が埋もれるほどの書類の隙間からゼロスは何とか顔を出す。

「ああ・・・・・ひまそうだな。ちょっとこい」

そんなゼロスを無視して、ゼラスはすたすたと廊下を歩いていってしまう。

そのままなかったことにして、己の仕事に戻ってもよかったが、領収書の整理とか、必要経費の計算、裏帳簿の記帳というような雑務ばかりだし・・・・・・・というよりは、これ以上、書類とにらめっこするよりは、久々に会った敬愛する美しい方と共にいたほうが有意義というもの。

ゼロスはすぐに上司を追った。

 

「・・・そこに座れ」

「そこって・・・・この床ですか?」

ゼラスがいたのは日当たりがよいというほかには、たいした特徴のない部屋。

その窓辺に彼女は立っていた。

「二度は言わんぞ?」

そういわれてしまえば、ゼロスは従うしかない。

訳も分からず、毛の長い絨毯の敷かれた床にちょこんと正座をすると、ゼラスはわずかにイヤな顔をした。

「少し高いが・・・・・・まあよいか」

「あの・・・・ですから、一体何を?」

答えはゼラスの行動で返ってきた。

「ゼラス様!?」

いきなり、ゼラスはゴロンと床にころがると、おもむろにゼロスの足の上に頭を乗せたのだ。

ぼふ!!

予想していなかった行動に慌て、うっかりゼラスの頭を落としてしまう。

ゼラスにとって幸いだったのは、ここが堅い床の上でなく、絨毯の上であった事であろう。

「・・・・・・・・・・私の頭を落とすたぁ、いい度胸だな」

「いやあ・・・・あっはっはっは・・・・・・」

乾いた笑いが白々しく響く。

「まあいい・・・・・」

よいしょ。とふたたび、頭をゼロスの膝の上に乗せる。

「しばらく、そのままでいろ。私は昼寝がしたい」

仰向けにねっころがり、目を閉じたまま、ゼラスは告げた。

「昼寝でしたらご自分の部屋でなさったらどうですか〜」

普段の彼らしからぬ情けない声。

「私はお前の膝枕で昼寝がしたいんだ」

物憂げに片目だけで、見つめられ、顔が火照るのがはっきりと分かった。

「お前だって、うれしかろ?私のような美女を膝枕できるんだ」

「そういうところを自分で言い切ってしまうあたり、とってもゼラスざまです」

「そうか?・・・・・・ついでに、なにか歌を歌ってくれると気が利いてるんだがな」

ゼラスはそういって目を閉じる。

「なんのついでですか、一体っ!!!」

しかし、ゼラスはすでに寝息を立てていた。

まったく、相変わらずですね・・・・・・・・・。

その寝顔を見つめ、ふと思う。

ここしばらくゼラスの命であちこち飛び回っていたが、だからと言って、ゼラス自身が遊んでいたわけではない事を知っている。

自分たち魔族に睡眠が必要かどうかはともかくとして、休息は必要だ。・・・・・・たとえば、こんな風に。

ゼロスは上司の自分に対する気遣いに、わずかに微苦笑をうかべ、小さく口ずさむ。

「♪ねぇ 今まで 君のいた場所は どんな風に素敵だったの? うん そうだね君の事だから 精一杯 健気に生きてきたんだろう・・・・」

すぱこーーーーん!!!!!

「な・・・なにするんですか!!!!!!」

ゼロスはいきなり、寝ていたはずのゼラスにスリッパでひっぱたかれ涙する。

「そんな前向きな歌を歌ってお前は私を殺す気か!!!!!」

むっくりと起き上がるゼラス。

「でもなんでもいいから歌えとおっしゃったのはゼラス様じゃないですか!!!!!」

「何でもいいとはいっとらん。なにか。といっただけだ」

「でも、子守り歌なんて前向きな歌ばかりですよ」

「お前のそれは子守り歌でもなんでもないわ!!!!!」

そういって、ゼラスはにやりと笑う。

「そうだな・・・・・・・お前の悲鳴を聞きながら眠るというのもなかなかいいかもしれん」

正座のままじりじりとあとじさるゼロスの肩をしっかりとつかむ。

そして,あとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

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とりあえず、自分の作品をパロってみる(笑)