once upon a time

ふぉお


 

はじめはほんの気まぐれだった。

 

普段なら、何もねぇはずの砂漠に、ボロキレみてぇのがおちてたもんだから、ちっとばかり好奇心がうずいちまって、ちかづいてみりゃあ、そこにいたのはくたばりぞこないの古代竜の小僧。

うっかり目が合っちまって・・・・で、ホレたね。

いや、へんな意味じゃなくてさ。

とにかく・・・・いい目つきをしてんだよ。

この世界すべてを憎んでるようで、そのくせ、どこか投げやりで。

その、あぶねぇバランスの上にそのガキが立ってたんだな。

そしたら、なんだかほっとくわけにはいかなくなっちまって、らしくもなく「救いの手」なんぞさしのばしちまった。

まあ、さすがに古代竜のまんまで救うのは無理だったから、魔族としてだけどな。

俺の名前を入れた新しい名前もつけてやったし。

・・・・安易だぁ?

ちっ。これだから、人間は。

確かに人間には安易におもえるかもしれねぇが、赤眼の魔王および、その腹心達の名前にゃ、それな

りの力がある。

人間どもがとなえる呪文の中にも俺達の名前があるだろ?

それに似たようなもんだな。

あ?知らない・・・・って・・・・ああ、あんたは魔法はつかわねぇのか。

ま、どっかの覇王なんざ、考えるのが面倒だって適当につけたらしいが・・・・そんなことはどうでもいいやな。

とにかく、奴に俺の名前を与え、俺を継ぐものとして育ててんだ。

「ガーヴ様!!!まだ呑んでんのかよ」

おう。いいとこにきたな。ちょうどお前の話をしてたんだ。

「・・・・・・どうせ、俺の悪口かなんかだろ?」

んなわけねぇだろ。悪く言うぐらいなら、とっととおいだしてるぜ?俺は。

ちょっとうるせぇが、まあ、けっこう使える奴だし、かなり満足してる。

「・・・・なに、にやにやしてんだよ。きもちわりーな」

いーや・・・・なんでもねぇよ。 

さて・・・・・・・・せっかくのお迎えだ。素直に帰ってやるよ。

あん?ああ・・・・今日は俺のおごりだ。遠慮しねぇで飲めや。

次に会うときはお互い敵同士かも知れねぇが・・・・・今日はたのしかったぜ。

じゃあな。また呑もうぜ。

 

 

「どうしたのよ。いつもにもましてぼーっとしちゃって」

不意に顔を覗き込まれ、我に返った。

「あ?ああ・・・・・・・ちょっとな・・・・昔の事を」

「めずらしいっっっ!!!!あんたが昔の事を思い出してるなんて!!!」

「なのなー・・・・・・・・」

天変地異の前触れね。などど本気でいってる彼女に苦笑して、ふたたび、あいつの髪の色した夕日を

見つめる。

その色が昔を思い出させた。

・・・・・・・・俺、あんたの事、嫌いじゃなかったぜ。

できればもう一度ぐらい呑みたかったよな。

「さ・・・・いくか」

俺は夕日に背を向けた。

 


某所に差し上げたものとは、なぜかラストの語り手がいきなり違ってたりします(笑)

 先方はヴァルヴァージョンでしたが、さてこちらは誰でしょう。

 設定に無理がありすぎですけど(笑)たまにはこんなことがあってもよいかと。

 ・・・・・・・もっとヴァルを絡ませたかった・・・・・・・・変な意味じゃなくて(笑)