このところ、彼女はいつも罪悪感に苛まれていた。
しかし、実際のところ責めがあるのは彼女ではなく、彼女の一族であり、だからこそ真実をゆがませ彼女に伝えたものなのだが。
けれど、知らないこととはいえ、偽りの正義をふりかざし彼を糾弾したのは事実。
知らなかったではすまされない重い真実。
知ろうとも思わなかった隠された歴史。
知らされた罪深き出来事。
「雪・・・・?」
空から舞い落ちてくる白い物をみとめ、彼女はふと、つぶやいた。
「・・・どうして・・・・・今日なの?」
忘れもしない去年のこの日、ひとつの命が消え、そして生まれた。
雪は、その時の情景、そして舞った羽根をどうしても思い出させてくれる。
だから雪は好きではない。
きっちりとカーテンを閉め、外を見えないようにする。
・・・・・・・忘れたい。
・・・・・・・忘れられない。
・・・・・・・忘れてはいけない。
すべてを受け入れ、見守ると決めたのだから。
なのに自分のこの心の弱さは何なのだろう。
追いつめたのは自分。
彼の命を奪う事に手を貸したのは自分。
他にも方法があったのではないかという気持ちは未だに拭いきれない。
もちろん、あのときあれが最善の方法であったのだろうけれど。
だからいつまでたっても彼である卵が孵化しないのは自分の業なのだと思っていた。
本来ならばそろそろ孵化してもいい頃なのだから。
「赦して。とはいえませんけれど・・・・・・」
だけど。
故に彼女は祈る。
誰に祈っているのかは自分でもわからない。
今まで信じていたものは偽りで。
今さら何を信じればいいと言うのか。
すべてが偽りではないのかもしれないけれど、それでも火竜王にだけは祈る気にはならない。
そもそも、彼の巫女であることをやめた自分にその権利があるのだろうか。
それでもただ祈り続ける。
いまの自分にできることはそれしかないから。
どうか彼を。
この罪この業を。
ぴきり。
長い長い祈りの時間。
ふいに、かすかな音が彼女に耳に届いた。
顔を上げれば、卵を入れてある籠がかすかに揺れている。
「・・・・そんな・・・!!!!」
初めにわき上がった感情は驚愕。そして戸惑い。
籠をのぞき込み、彼女はようやく幸せそうな笑みを浮かべた。
「・・・・・おかえりなさい」
すべての罪が許される。
今宵は聖なる日なのだから。
FIN
珍しく季節(クリスマス)ネタ。
そんなわけで、ヴァルが真っ白になった日はこの日です。誰がなんと言っても私の世界ではそれが決定事項(おい)
あれから一年後という設定。実際は何年たってるんだか・・・。
・・・・・ところでドラゴンの卵はどれぐらいで孵るんでしょうね?
ヴァルフィリ書きたかったのにフィリアさん罪人にしちゃったよ(泣笑)