その日、星空がとても奇麗だった。無数とも言えるその空の光を見上げ、ため息をつくフィリア。
「ほんっとーに、奇麗ねぇ……」
縁側へ出て、花火をしていた3人にもその呟きは聞こえた。
「ほんとうだっっ、ほらほらヴァルガーヴ様見て下さいよぅ」
線香花火の火を落とさないように、極力動かないようにして空を見上げるヴァル。
「…そうだな」
満天の星空に、しばし圧倒され沈黙する4人。
吸い込まれそうなその光は、惜しみない程瞬きつづけていた。
「あっっ、蝋燭が無くなりそうですぜっっ」
沈黙を破ったのはクラボスだった。
その言葉に、我に返るフィリア。
「え、あら本当っ
まってて、すぐとってくるからっ」
後ろを向き、台所へと駆け出す。
途中、何かが足へとぶつかり盛大に転ぶフィリア。
「大丈夫かっ、フィリア?」
縁側から家へ戻り、少し強張った声でフィリアに声を掛けるヴァル。
おでこを押さえ、涙目でこちらを向くフィリア。
「うーーーー…いったーいっっ」
そう言いながら、もうすっかり笑顔も取り戻し、今自分が怪我をした原因であった障害物をみやる。
「あーーっっ、ちょっとうヴァルの鞄じゃないのぉっ
学校から帰ってきたら、すぐ部屋に置いてっていつも言ってるのにーっっ」
そう言って、その鞄を取り上げヴァルの足へと軽く当てるフィリア。
「そ…それは悪かったけどっ
怪我したのは俺のせいじゃ無いからなっっ、フィリアがぼけてたのがいけないんだぞっ」
「ま、確かに」
ヴァルの言葉に素直に頷き、スカートを整えるフィリア。
その拍子に鞄から何か封筒らしきものが滑り落ちる。
「…なにこれ?」
可愛らしい花のプリントがされている封筒、おきまりのハートのシール…。
ここまで揃っていれば誰であろうが、この手紙の意味を察するはずである…。
「なになに?
あっ、ヴァルガーヴ様っ、やりますねえっっ」
「おおっっ、さすがっ」
フィリアに詰め寄り、手紙をしげしげと眺める二人。
「あっっ、何やってんだよっ」
その現状にやっと気づいたのか、二人を押しのけ手紙を奪い返すヴァル。
「…なあに、その手紙?」
それでも、フィリアだけは眉を潜め首を傾げる。
「あねさんっ、これはですねぇ…ラブ…」
ごすっっっっ
いいかけたジラスの腹を思いっきり蹴り上げる。
ジラスの体は勢い良く宙に舞、台所へと投げ飛ばされる。
どすっっっ
叩きつけられるように床へ落ち、一瞬呻くジラス。
が、それもつかの間、すぐに飛び上がりこちらへ向かってくるガーヴに詰め寄るジラス。
「ヴァルガーヴ様ぁっっっ、何するんですかぁぁぁっっ!!!」
「てめーーーが悪いっ、てめーーーーがっっ!!」
自分が傷を負わせたにもかかわらず、額に血管を浮きだたせ叫ぶヴァル。
その様子を見つつ、フィリアは
「まあまあ、兄弟(?)喧嘩だなんて、ヴァルもまだまだ子供ねぇ」
と、にこにこ微笑んでいる。
なんか違う気がする…と、クラボスは心の中で思いつつ、二人の所へ駆ける。
「まあまあ、ヴァルガーヴ様っ、一体どうしたんです?」
今にも殴りかかりそうな二人の間に入り、仲裁するクラボス。
「…………別にっ」
吐き捨てるように言って、髪をかき上げるヴァル。
「そんな………あ……」
何かに気付いたように声を上げるクラボス。
「なになに、クラボスどうかしたか?」
相変わらず目を丸め、ぼーとしていたジラスが尋ねる。
「…はー……、ジラス、お前なんも解ってないな……」
「え゛?」
言われ、さっき言いかけた事を回想する。
「俺はただ、ヴァルガーヴ様がラブレ………」
ばきっっっっ
またも、話の途中でジラスの顔に思いっきり肘うちするヴァル。
「なっっ、なにすんですかぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ」
「あたりまえだろうぅぅぅぅぅっっっ!!!」
今度は少しの動揺すらなしにヴァルに叫ぶジラス。
そんなジラスに深くため息をつき、クラボスが呟く。
「……ジラス…、だからその事だよ」
「………へ?」
その言葉の意味が理解できず、間抜けな声を出すジラス。
「…だからぁ…、その手紙の事だよ。
ヴァルガーヴ様は、その事を姐さんに知られたくないんだ」
「へっ………・?
あっ、なるほどっ」
ようやく理解し、深く相づちをつくジラス。
「べっ…べつに知られたくない訳じゃねーーけどよっ」
その言葉に慌てて弁解するようにするヴァル。
「ただ…………、
誤解されたくないだけだよっ」
そう顔を真っ赤にして言い、ふいっと立ち上がるヴァル。
ジラスがまた余計な事を言う。
「それって…、知られたくないって事なんじゃあ……」
「うっせえっ」
その言葉に声を大きくして叫ぶヴァル。
それ以上詮索されたくなかったのか、外へ出、再び花火をやりだすヴァル。
「…はーーー、男心だねぇ」
「ヴァルガーヴ様も大人になって……」
二人は口々に呟き、ヴァルガーヴの後を追い庭へ出る。
そんなヴァルの気持ちを知ってか知らずか、フィリアが楽しげに呟く。
「ねーーねーーーーヴァルぅっっ
さっきの手紙ってぇ、もしかしてラブレターってやつぅ?
えっ、なに違う?
えーーーーーっっうっそぉぉぉっっ、あーーーーけど、お返事はちゃんとしてあげるのよっ、だってくれた子にわるいでしよぅっ?
…わるくない?
あーーーっっ、もう、まだまだ考えが子供ねーーーーっっヴァルもぅっ
そのくせ体だけはすくすく育っちゃって………」
フィリアの笑い声と、ヴァルの叫び声が同時にこだました、その日の夜空は
止めどなく美しく、尽きることなく辺りを照らし続けていた……。
さてさて、ヴァルくんとジラスくんが、とぉぉぉぉっってぇも可哀想なお話でしたねー(笑)
たいした進展もない二人ですが、それもまあこの二人にはお似合いってことでっ(はぁと)
洗濯日和とは別に(と、いってもこのお話の続編になるわけですが)、シリアスシリアスした、二人のエピソード(この場合、区別を付けるために題名を変えますが)を入れようっっっと、思っておりましゅっっ(汗)そんな過程を過ぎたのちに、めでたく結婚っと……
ととと…、考えだけは立ててあるのですが…いかんせん時間がぁっっ(汗)
出来上がったら、即送りましゅので、気長にお待ちくだしゃいねっ(はぁと)