Don't Wanna See You.

れい


 貴方はいつも、悲しくて、儚げで、諦めた眼をしてる。

 どうしていつもそんな眼で在り続けられるのですか?

 どうしてみんな壊そうとするのですか?

 どうして貴方はいつも一人ぼっちで…

 

 私は貴方の光になりたい、って、思い続けてたんですよ。

 同情とかそんなのじゃなくて、もっと違う、何か…

 

 私は貴方の光になりたい、そう思い続けていたのに…

 

 私は、貴方の隣にいられる資格は無いのですか…?

 

 貴方は何故そんなに悲しそうな眼をしているのですか?

 

 

 

 

「私の名は、フィリア=ウル=コプト。大神官バザード=ウル=コプトの娘で、聖位1位の巫女」

 何で私はこんなコト言ってるんでしょう。

 彼にとって見ればこんなもの、意味の無いモノだと言うのに。

 

「ほう、なかなかエライじゃねーか」

 だから何だってんだ?

 あんたが巫女だろうが神官だろうが、俺にとって見れば何でもない。

 そんなの、違う種族の俺に言ったって、何の意味も持たないのにな。

 

「火竜王ヴラバザードの名の元において汝に審判を下す。愚かな野心を捨て、今すぐ懺悔なさい、」

 違う。私はこんな事を言いに来たんじゃない、

 だってのに私は火竜王の名まで借りて、何を言っているの?

 

「さもなくば、」

「さもなくば?」

 言ってくれるな、全く。

 

「言ってくれるな、世間知らずのお嬢さんよ」

 懺悔しろ?野心を捨てろ?

 そんな事言われる筋合いじゃねぇよ、あんたに俺の何が判るって言うんだ?

 

「σιυδγΣβεκωαξ…」

 私は貴方にとって、世間知らずのお嬢さんでしかないのですか?

 私は貴方にとって、憎悪の対象でしかないのですか?

 

「καοτΙκ ΔτδτηγατΕ!!」

 私は…

 

 

 どぅんっ!!

 

 

「お前に、俺は裁けねえよ、

 血塗られたお前ら黄金竜の手じゃ、なあ」

 言わなくても、あんた程の巫女なら分かるだろ?

 俺を殺せない、なんて、な。

 

「…聞かせて下さい、いつか貴方が言っていた事を。私達が本当に、貴方の種族を死に追いやったのだ、と」

 聞いたってどうにもならない。

 そんなの分かってる。

 でも私は…

 真実を、自分の手で受け止めねばならないから…

 

 

 

 

 聞かせてくれ、か。

 聞いてあんたはどうするんだ?

 もうどうにもならねぇだろ、そんなの。

 意味の無い…ははっ。

 くだらねぇ。

 

 ホント、くだらねぇよ… 

 だからさ…

 

「もう帰んな、お嬢さん」

 

 

 

 …ホントなら、

 あんたに言うべき言葉じゃねぇんだよね、これって。

 あんたは唯の世間知らずのお嬢さん、なんだからな。

 あんたは唯のお嬢さんで、古代竜を死に追いやった本人でもない。

 はっきし言えば、筋違い、ってなヤツだ。

 

 だけどよ、この憎悪をどーにかしないとこっちの身が持たねぇんだ。

 だから、身も蓋も無い言い方だけど、とっとと帰ってくれ。

 もう消えてくれよ。

 

 俺はあんたの為になんねぇ男だからさ。

 

 消えてくれよ

 顔を見せないでくれよ

 あんたの悲しそうな顔をこれ以上見たくない。

 ――何時か、その儚げで端正なあんたを壊したい時が来るかも知れないから。

 

 あんたはなんでそんな悲しそうな眼をしているんだ?

 

 もう帰んな、お嬢さん。

 俺はあんたにもう会いたくない。