マッチ売りのヴァル
熊野さくら
ある冬の凍えるような寒い日に、一人の男の子がたたずんでいます。
「マッチはいりませんか?マッチ買って下さい・・・・・・」
今にも雪が降りだしそうな空の下、ぼろぼろの服に裸足でマッチを売っています。
「ぜんぜん売れない・・・・・全部売れるまでお母さんに帰ってくるなって言われてるのに・・・」
道行く人を見ても、急ぎ早に通り過ぎ、ヴァルのことを見る人はいません。
今日はクリスマス・イヴ。皆雪の降り出す前に家路につきたいのです。
「うう・・・・寒い・・・・」
ガタガタと震えながらそれでも必死に声をかけるヴァル。
「マッチ買ってくださ〜〜い・・・・・・・・・・・」
近くの窓を除くと、中ではパーティの真っ最中です。
「いいなぁ・・・・」
おいしそうな食べ物や、暖かそうな暖炉の前で楽しそうに笑っています。
「・・・・・・どうして僕はこんなことしてなくちゃいけないんだろう・・・」
ぽろぽろと涙を流してうつむくヴァル。
ふと頭上からなにか白いものは落ちてきました。
「・・・雪?」
白く、冷たい雪がヴァルの体をさらに冷やします。壁を背に座り込んでしまいました。
「このまま死んじゃうのかなぁ・・・・・・・」
あまりの寒さに気が遠くなりそうです。
ふと自分の持っているマッチに目が止まりました。
「これで少しは寒さがしのげるかなぁ・・・・・」
そう言ってマッチを擦り、火を灯しました。
「ああ・・・あったかい・・・・・・」
しかし、その火もすぐに消えてしまいます。
「あ・・・・・・・・・」
すぐにもう一本を灯しても結果は同じ事でした。
ほんとにもうだめかも・・・・とヴァルが思った瞬間。
「こんなとこでなにやってんだ?」
声の方を振り向くと赤い髪をした一人の男が立っていました。
「あの・・・・マッチ買って下さい!!」
やっと自分の存在に気がついてくれた人がいた喜びに声を張り上げます。
「マッチぃ?んなもん今時買うやつなんかいねーだろ」
あきれて男が言います。
「そうなんですか・・・?」
「今はライターってもんがあるんだよ。マッチよりずーーっと便利だぞ」
ポケットからライターを取り出してヴァルに見せました。
「な?」
「・・・・でも・・・これ全部売らないとお家に帰れないんです・・・・・」
ヴァルは悲しそうな顔でつぶやきます。
「うーーん・・・買ってやりたいが・・・こんなに俺もいらないからな・・・」
男が考え込みながらふとその少年を見ます。
うをっモロ俺好みじゃねーかっっ・・・サンタさんからのプレゼントか?!
男の脳が壊れはじめました。
「よしっ買ってやる」
きっぱりと言い放ちました。
「ほんと?!」
ヴァルはうれしくて飛び上がらんばかりに喜びます。
寒そうなその身体。俺があっためてやぜ!
「ああ。でも家まで持って来てくれたらな」
あくまで冷静を装って言います。
「持っていくよ!どこへだって!!」
これで家に帰れる・・・・そう思ったヴァルは男の要求を呑みました。
「じゃあ着いてきな」
「うんっ!!」
しばらく歩くと大きなマンションの一室に着きました。
「ここだ。入れよ」
ヴァルを促します。
「・・・おじゃまします・・・」
広い部屋には誰の気配もありません。
「一人で住んでるんですか?」
「ああ。ほら、座れよ」
暖かいお茶を出してヴァルにソファの座るように促します。
「ありがとう・・・・・あったかい・・・」
冷え切った体が少しづつ回復してきました。
「なんであんなことやってたんだ?」
ヴァルの横に座り、お茶を飲みつつ問います。
「えっと・・・お母さんが立って歩けてしゃべれるやつは自分の分は自分で稼げって言うんです・・・」
「ふ〜〜ん・・・・」
「あの・・・・」
「ん?」
「・・・・・・なんでこんなにくっついてるんですか?」
気がつくと男はヴァルの体にぴったりと寄り添っていました。
「なんでって・・・・こういうことしようかなぁって思って・・・」
「あっ・・・なにするんですかっっ」
いきなり押し倒され、身動きが取れません。
「買ったもんどうしようと俺の勝手だろ?」
「え?・・・・」
訳が分からず唖然とするヴァル。
「だれもマッチ買うなんて言ってねえよな?」
「やっ・・・やめて・・・・」
抵抗しようにも体を押え込まれ身動きできません。
「♪」
「あ・・・・・・・」
こうして・・・・・・ヴァルは家に帰ることなくずーーっとこの男と暮らしましたとさ。
援助交際はやめましょう(笑)
めでたしめでたし♪
一言・・・・
申し訳ありません・・・・・・・・・・・・・・・。
脳が壊れてるのはガーヴ様でなくてさくらんです・・・・・・・・・・・。