匿名希望
酸っぱいブドウならばいらない。
それが強がりであることは自分でも分かっている。
・・・・こういうと誤解されそうだが、青春真っ盛りの男なんてものはすれ違った女が好みだったらおもわず目で追ってしまったり、特に何の感情も抱いていない女にすら何かの拍子にどきっとしたりするもんだ・・・・一般論にすり替えて自分を正当化してる訳じゃない、たぶん。
ましてや惚れた女ならいわずものがな。一日中でも愛でていたいし、しょっちゅうどきどきするし、出来ることならふれたいし、抱きしめたいし、それ以上も・・・・と考えるのは別におかしいことじゃないよな!?
けど、相手がそれを求めていない。
女はそういうことのためだけにいるんじゃないとか、恋人同士てもそんなことばっかりしてる訳じゃないとかその他いろいろそういうことは置いとて。
そもそも彼女は俺をそういう――恋愛感情を持って見ていない。そもそもそういう感情を抱くことが出来る相手だとすら思ってない気がする。
彼女は優しいし、俺が彼女に好かれていることは疑ってない。
けれどそれは家族愛であり、さらにいうなら母親の息子に対する愛情みたいなものだということも、哀しいかな欠片も疑えない。
いっそ体だけが目当てならどうにでも出来たかもしれないけど。
好きだからこそ心を壊すようなことは出来なくて。
酸っぱいブドウはいらない。
自分に言い聞かせるように強がる。
永遠に、甘くはならないかもしれないけれど。