いけいけ青春小僧(笑)

匿名希望


 『フィリア』

 俺はフィリアの細い肩にそっと手を置いた。

『ヴァル・・・・』

 俺に潤んだ瞳を向けていたフィリアが、ゆっくりとそれを閉じる。

 そっと、彼女を引き寄せ・・・・。

「・・・・分、親分」

 違う、フィリアは俺をそんな風に呼びはしない。

 ・・・・って。

「どうした親分? 気分でも悪いか?」

 呼んでいたのはジラスだった。

「・・・・何でもない」

 俺はそっぽを向き、赤面した。俺の莫迦。

「親分、ホント大丈夫か?」

「大丈夫だ」

 俺の名はヴァル。今のジラスと、グラボスと・・・・フィリアと四人で暮らしている。

 ジラス達はどういう訳か俺を親分と呼ぶし、もっとわからないのはフィリアだ。

 うんと小さな頃は俺は彼女を母親だと思っていたが、実はそうじゃないらしい。

 以来、妙にフィリアが気になるのだが・・・・向こうはそうでもないらしい。

「・・・・ル?」

 全く、何時までも子どもだと思うなよな。

「ヴァル?」

「大丈夫だっていってるだろ!?」

「ヴァル!?」

 いらついて怒鳴りつけた相手は・・・・ジラスではなくフィリアだった。驚いて目を見開いている。

「悪か・・・・」

 謝ろうとして、今度は俺が目を見開いた。

「フィリア、その格好・・・・」

「変かしら?」

 小首を傾げて一回転までしてみせる。

 元々が巫女なのでおしゃれには疎かった彼女だが、最近装う楽しみというものに目覚めたらしく、時々見たことも無いような服を着て俺達を驚かせる。

 ・・・・それ自体は悪いことでは無いのだが。

 ほとんど着たきりの俺がいうのも何だが、フィリアのセンスは世間一般とちょっと・・・・かなりずれている。何を参考にしているのやら。

 だが、今着てるのに比べたら全部おとなしいの部類に入る。

「あ、姉さん、どっか行くのか?」

 幾分引きつりながらジラスが尋ねる。

「リナさんがこの近くまで遊びに来てるそうだから会いに行こうかと・・・・」

 その格好で街を歩くのか!? 冗談じゃない。

「フィリア、しっぽが見えてるとまずいんじゃないか?」

 あえて「露出度が高い」とは言わなかった。

「大丈夫よ。最近はファッションでしっぽつける人もいるらしいから」

「初耳だ」

 一体、誰がそんなことを言った!?

「・・・・ダメかしら」

 すこし悲しそうな顔で俯くフィリア。年上に向かって言うのも何だが凶悪なまでにかわいい。

 抱きしめたい衝動に駆られるが、実行するわけにも行かない。

「・・・・久しぶりに会うんだろ。見慣れた格好の方が向こうにも見つけやすいんじゃないか?」

「・・・・それもそうね」

 しばらく考えて納得したのか、フィリアは着替えに奥に引っ込んだ。

 これであの姿がその辺のヤローの視線にさらされるは阻止した。

 それはいいのだが・・・・。

 ・・・・俺の理性、いつまで持つのだろーか?