匿名希望
「あ、降ってきたんだ」
思わず呟いた独り言はすぐさま白い色に変わる。外で降る雪に負けていない。
雪の向こうに見えるツリーの光というのもなかなか幻想的な物だが、このままじっと見てるにはいささか寒すぎる。
あたしは扉を閉め、暖炉の前に座り直した。
テーブルの上の蝋燭は随分短くなっている・・・・明かりにしとけばよかったかな?
待ち人は来ない。
去年の今頃はみんなでわいわいやってたのよねー・・・・もうごちそうも食べてたし。
ああ、手つかずの料理が虚しい。
一応二人分なんだけど・・・・いやあたしはもっとはいるけどさぁ。どうせ向こうは食べる必要ないんだし、・・・・来ないかもしれないし。
・・・・やっぱりみんなと一緒に騒いでればよかったかな。
はぁ。
ふと、扉が叩かれた様な音がする。
彼のはずはない。彼なら扉を開ける必要もないんだから。
けれどついそちらに向かう・・・・さっきもそれで肩すかしを食ったのに。
開ける。
「お招きありがとうございます」
見慣れた笑顔・・・・。
「さっ、寒いのにわざわざ開けさせないでよね」
つい憎まれ口を叩く。
「いきなりはいるのは不躾かと思いまして・・・・」
「いつもは全然気にしないくせに」
・・・・来てくれたんだ。
「まあ、いいわ」
つい顔が笑ってしまう。
「入って――ゼロス」
「お邪魔します、リナさん」