「ゼロス。今暇だな?」
いきなりゼロスの部屋のドアを開け放ったゼラスは、開口一番そうのたまった。
「・・・・・・あの・・・・・・見てのとうりですが?」
留守中の間に溜まっってしまった机が埋もれるほどの書類の隙間からゼロスは何とか顔を出す。
「ちょっとこい」
そんなゼロスを無視して、ゼラスはすたすたと廊下を歩いていってしまう。
そのままなかったことにして、己の仕事に戻ってもよかったが、さしあたって急ぎの仕事があるわけでもなく・・・・・・・というよりは、これ以上、書類とにらめっこするよりは、久々に会った敬愛する美しい方と共にいたほうが有意義というもの。
ゼロスはすぐに上司を追った。
「・・・そこに座れ」
「そこって・・・・この床ですか?」
ゼラスがいたのは日当たりがよいというほかには、たいした特徴のない部屋。
その窓辺に彼女は立っていた。
「二度は言わんぞ?」
そういわれてしまえば、ゼロスは従うしかない。
訳も分からず、毛の長い絨毯の敷かれた床にちょこんと正座をすると、ゼラスはわずかにイヤな顔をした。
「少し高いが・・・・・・まあよいか」
「あの・・・・ですから、一体何を?」
答えはゼラスの行動で返ってきた。
「うわあああ!!!!!」
いきなり、ゼラスはゴロンと床にころがると、おもむろにゼロスの足の上に頭を乗せたのだ。
予想していなかった行動に慌てるが、下手に動いてゼラスの頭を落とすわけにはいかない。
「ゼゼゼゼ・・・ゼラス様!?」
「しばらく、そのままでいろ。私は昼寝がしたい」
仰向けにねっころがり、目を閉じたまま、ゼラスは告げた。
「昼寝でしたらご自分の部屋でなさったらどうですか〜」
普段の彼らしからぬ情けない声。
「私はお前の膝枕で昼寝がしたいんだ」
物憂げに片目だけで、見つめられ、顔が火照るのがはっきりと分かった。
「お前だって、うれしかろ?私のような美女を膝枕できるんだ」
自分で言ってしまうあたり、ゼラスのゼラスたるところであるが、もちろん、それがゼロスにとって、嬉しくないはずがない。
激しく嬉しいが・・・・・恐れ多いと言うか、ガラにもなく緊張してしまう。
「・・・・・・ついでに、なにか歌を歌ってくれると気が利いてるんだがな」
ゼラスはそういって目を閉じる。
「なななななな・・・・・・・何かって・・・・・・」
しかし、ゼラスはすでに寝息を立てていた。
・・・・・・少しやつれられましたか・・・・・・。
その寝顔を見つめ、ふと思う。
ここしばらくゼラスの命であちこち飛び回っていたが、だからと言って、ゼラス自身が遊んでいたわけではない事を知っている。
自分たち魔族に睡眠が必要かどうかはともかくとして、休息は必要だ。・・・・・・たとえば、こんな風に。
ゼロスは上司の自分に対する気遣いに、わずかに微苦笑をうかべ、小さく口ずさむ。
どこで聞いたのかは忘れてしまったけれど、なんとなく懐かしさを感じる歌を。
ゼラスのために。
ぐはっっっ(吐血)なにかいてんだ?オチないじゃん、これ・・・・・・。
魔族がほのぼので良いのか???